旅日記・2007年メキシコ旅行編1:Hace dos anos


二年ぶりのメキシコ行きは、半ば必要に迫られてのことでした。大学院に入って引き続きメキシコの研究をしているものの、どうしても日本では手に入る資料の数が限られてきます。なので今年は行かなければ、と、大学院入学前から考えていました。


そこでネックになるのはやはり資金です。貧乏学生ゆえの悩みで、メキシコでの滞在費・資料代・遊興費などは四月から始めたバイトの蓄えでどうにかなりそうだったのですが、やはり航空券が高いんですよね。ただこのことを母に相談したところ、旧海軍でコックをしていた亡き祖父が孫のために恩給を貯めていて、それを母が祖母から預かってたらしく、それの一部を使えば、と言われました。兄や従姉弟は結婚資金や結婚後の車購入用に使ったらしく、自分だけが研究という(結婚や家族ごとと比べれば)独りよがりな用途に使うのはどうかとも思いましたが、「必要なことに使ったほうが祖父も喜ぶはず」という母の一言で迷いを振り切りました。


航空会社は、できればアエロメヒコが良かったのですが、料金が高いのと予約が埋まっていたために断念し、また直行便(という名目で、実はバンクーバー乗り換え)が出てるJALも埋まっていました。ちなみに六月の時点で九月上旬の予約が埋まっていました、この二社は。それで、その他の航空会社からトランジットなどの便を考え、ANAを選びました。ANAで行く、という話をすると、ANAもメキシコまで飛ばしてるのかとよく聞かれましたが、ANAを使ったのはは日米間で、アメリカからはANAと同じスターアライアンスグループ?のメヒカーナとユナイテッド行きました。ちなみにメキシコまでの全航空チケット(ユナイテッド・メヒカーナの分まで)がANAのHPで買えました。しかもウェブ上で座席指定までできたので、結構良かったです。


そんなこんなでチケットも購入し、久々にレポートに追われたセメスター末・地獄の集中講義を何とか乗り切り、メキシコ行きの当日を迎えました。

メキシコの色


赤いレンガとくすんだ草木の色が眼下に広がっている。サマータイム期間中なので夜の七時でも窓の外はまだ明るい。通路側の座席からはよく見えないが、ロスから乗ったメキシコ人の乗客の多くはその風景に視線を送っている。アメリカの都市とは異なる、メキシコシティという都市の輪郭。異国に来たという感じはしない。周りの乗客と同じく、メキシコに戻ってきたという気持ちの方が強い。ただいま、メキシコ。


と、突然文学チックに書き出してみましたが、実は今月の頭から二週間ほど、二年ぶりにメキシコへ行ってきました。まだ若干時差ぼけが治ってませんが、何とか社会(大学)復帰しつつあります。簡単な旅の記録はミクシーの方に書いたのですが、PC室の監視という暇なバイト時間(笑)を活用して、久々にはてなで旅日記でも書きたいと思います。更新ペースは相変わらず不定期です、すいません。

「モントレー」とググり癖


最近よく「モントレー」という言葉を目にします。特別に参加させてもらってる後輩のゼミで読んでるスティグリッツフェアトレード』や、サックス・イースタリー論争を追っていてたどり着いたここでも冒頭から出てきます、「モントレー」。


これ、国連の開発資金会議をやったという説明から考えるとメキシコの地名のつもりなんでしょうけど、それならモンテレイが正解です。いや、訳語の間違いを逐一指摘していたら際限ないし、内容には関係ない枝葉部分なので、どうでもいいと言えばそうなんですけど、やっぱりちょっと気になります。


で、ググってみたら…何と「モントレー」の方が多い。。。何でかなぁと思って見てみると、アメリカのカリフォルニアにそういう名前の郡があるからみたいですね。一つ勉強になりました。ただ、メキシコの地名としては上の二つの例とも間違ってるのも確かです。


自分も今NAFTA関連の洋書を院の授業で読んでて、レジュメ作る時に頻度の低い専門用語の訳出に苦労してるんですけど、やっぱりそういう時に一番役に立つのはグーグル様なんですよね*1。特に商業ベースのもの(本)ならば、ググる程度に軽く調べるくらいすべきだと思うんですけど、どうなんでしょうか。繰り返しになりますが枝葉の部分なので、それほど重要ではないんですけども。

*1:学部時代、スペイン語の先生が「検索エンジンは用例集の役割も果たしてくれるから、そういう風に使いこなすと良い」と仰っていたんですが、最近その意味が良く分かる様になりました。

理想と現実

しばらく放置してる間にオプションの時計&カウンターが消滅してました。あわわ。


四月から大学院生となり、メキシコのこと・都市貧困層のこと・貧困政策のことなどなど、思うがままに勉強してやる!…と思っていたんですが、中々思ったとおりにいかない日々を過ごしています。その理由は授業が思ったよりも忙しいこと、これに尽きます(プラス、自分の生産性の低さw)。


「大学院」と聞くと、一般的には好きな研究ばかりしてるイメージがあると思うんですが、実情はちょっと違います。修士一年目はそれなりに授業数が多く、しかも多くはゼミ形式の授業のため、色々読んだりまとめたりして一週間が終わる、なんてパターンが多いようです(これは自分だけではなく、周りの院生も同じみたいです)。


自分が所属している院のコースの場合*1、二年間で30単位が修了要件で、そのうち一年目で取得できるのが26単位(4単位は修論ゼミで二年次必修)なのですが、一年目でゼミがないこと*2や就職活動および各種試験のことを考えると、これを全て一年次のうちに取得しておくことが望ましく、指導教官にもその様に言われています。そのため、前期は週に6コマ(後期は5コマ)+夏と冬に集中講義を2コマ、という、それなりに厳しいスケジュールになっています。一見するとこれはあんまり「厳し」くない、と思われるかもしれませんが、講義を受けてそれを消化するだけではなく、その合間に論文の準備をしなければならない、ということを考えると、(少なくとも自分の様なノロマ人間にとっては)そこそこ「厳しい」んじゃないかな、というカンジです。。。目下の悩みは読みかけの論文資料が進まないことで、不謹慎ながら麻疹で一週間休講になってくれ!なんて思ってましたw(すいません。。。)。


ともあれ、自分で選んだ道、理想と現実が違っていても求められるのは現実を少しでも理想に近付けていく努力、なのだと考えるようにしています。ちょっと軽めの前向きさが自分のウリでもあるので、ゆるーく頑張ろう、と思っています。とりあえず夏にメキシコに資料集めに行く予定で、その際にちょっと観光なども、と考えているので、それを楽しみにガンバってます。。。


とりあえず、今日のところはこんなところで。

*1:うちの大学は単科大のくせに院では四つのコースを設けているため、他のコースは必ずしも上記のとおりではないのですが。

*2:一応「高度専門的職業人養成」コースらしく、研究者養成とは異なる特色を出すための措置らしいのですが、その割には(当たり前ですが)修論もちゃんと書かせるんですよねw。

パラグアイ邦人誘拐事件に関して


一週間ほど前になりますが、パラグアイで二人の日本人と二人の現地の方が誘拐されました。先日日本人の女性が無事解放された様ですが、残る三人の身柄は未だ拘束されたままです。犯人グループは身代金を要求してるとのこと。


正直、パラグアイに関してはさっぱりで、お恥ずかしながら「え〜っと、首都はアスンシオンだっけ?」程度のレベルなんですが、二点ほど思う所をちょっと書きたいと思います。


まず第一に、この手のラテンアメリカでの身代金目的の誘拐事件では、人質が殺されることはあまり多くない、ということ。犯人はプロで、無駄な殺しを避ける傾向にある、とどこかで聞いた覚えがあります(確か留学時代に大使館筋の方からだった様な)。メキシコでもバスジャック等が時々起こりますが、金品を取られても命までは取られないケースが大半です。


第二に、これはちょっと触れ難いテーマでもあるんですが*1ラテンアメリカに進出する日本の宗教団体について。報道されている様に誘拐された邦人二人は統一教会*2の関係者で、中には日本の宗教団体が南米に何しに行ってるんだ、と思う方がいると思います。ただ実はラテンアメリカでは日本の宗教団体の活動が盛り上がってきていて(語弊がありますかねw)、信者を獲得しているみたいです。メキシコにはそれほど多くの団体が来ているわけではなく、自分が聞いた限りではメキシコ中部で天理教が活動していることぐらいしか知りませんが。まぁ主に南米での活動が多いようです。では何故多いのかというと、どうも日系人の出稼ぎ労働者を組織しているのが種々の宗教団体なのだそうです。去年、同じゼミに日系人の出稼ぎ問題を卒論のテーマにしていた子がいて、その子の発表を聞いてて知ったんですが。


何はともあれ、人質となってる方々が一刻も早く解放され、事件が解決するのを願っています。

*1:宗教に対する自分の立場は中立的だと思います。否定も肯定もしません。典型的な日本人ですねw。

*2:統一教会は日本の宗教なのか、とも思いましたが、広い意味での「日本の宗教」ということにしておきます、さしあたり。

白代の過客

ちょっと間が空いてしまいましたね。年度末のゴタゴタは、同じ大学院に進んだため然程なかったのですが、ゼミの論集作りや花粉症やら帰省やらドラクエ(懐かしいw)やらでドタバタしてました。勝手知ったるキャンパスとは言え、新生活でまたちょっと忙しくなりそうですが、緩いカンジでまた更新していきたいと思います。

『バス174』


TSUTAYA DISCASに入会して初めに借りたのが、ブラジルで実際に起きたバスジャック事件のドキュメンタリー映画の『バス174』でした。実は内容の説明を詳しく読んでなくて、実話を元にしたフィクションだと思ってたので、実際に見始めてちょっと驚いたんですけど(アホですねw)、良い映画でした。


このバスジャック犯は、幼少の頃に母が強盗に殺されるのを目の当たりにし、その後に家を出てストリートチルドレンとなりました。路上暮らしの中でも仲間が警察に殺されるといった衝撃的な事件を経験しています。そのためか、乗っ取ったバスから警察を罵倒するシーンが多々あります。ただ、人質の大学生を「授業に遅刻するから」といってバスから降ろしたりと、不可解な行動も見られます。こういう犯人の心情は映画が後半に差し掛かっていく中で次第に(何となくですが)明らかになっていきます。


開発経済学の世界では「貧困の悪循環」という良く知られた理論があります。これは簡単に言うと、低所得→低貯蓄→低水準の投資→低所得、というものです*1。これは経済学的に貧困を捉えた古典的な議論なんですが、これと似た様な社会的構図がこの映画から、と言うかブラジル社会(ひいては途上国一般)から見て取れるのでは、と思いました。つまり、貧困という前提になる状況があって、スラム、犯罪、警察や刑務所等の制度的な不備といったものが循環的に結びついている。勿論これはこれでオーソドックスな議論だと思いますが、この『バス174』はそういった構図が色濃く見られる映画でした。


(以下、ちょっとだけネタバレがありますのでご注意下さい)


それと個人的に印象に残ったのは映画の終盤のあるシーンでした。警察の特殊部隊が犯人の狙撃に失敗し、犯人が人質を射殺し*2、包囲していた警察が犯人を取り押さえる場面で、周りの野次馬が犯人の所に雪崩を打って押し寄せます。野次馬は口々に「奴を殺せ!」「撃ってしまえ!」と叫んでいます。バスジャック事件の現場とは思えないぐらいに警察の包囲網がモロい、という点は置いておくにしろ、周りの人達の狂気的な振る舞いにはちょっとゾッとしてしまいました。


しかし同時にこれと似た様な映像をどこかで目にしたことがある、とも思いました。ちょっと経ってから気付いたんですが、留学中にメキシコで起きた「警官三人のリンチ殺人事件」がその既視感の原因でした。これは、麻薬組織を追ってた警官が地元の子供を誘拐したと勘違いされ、リンチされた挙句に焼き殺された、という事件だったんですが、その時も怒り狂った300名余りの地元住民が警官を殴りつけていました(ちょっと記憶が曖昧なので所々事実誤認があるかもしれません)。別にこういう気質がラテン系に特有のものだ、などと言うつもりはないんですが、少なくとも日本ではあまりお目にかからない画ですよね。


と、色々と示唆に富むドキュメンタリーでした。


バス174 スペシャル・エディション [DVD]

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*1:勿論、供給サイドと需要サイドのそれぞれを考えなければならないので、実際はもうちょっと複雑ですが、ここでは単純化して書いています。

*2:被害者にとって致命傷となったのは特殊部隊の誤射した一発だ、とも映画の最後で言われてましたけど。