メキシコ再入国時のあれこれ


カリブ海から吹き寄せる潮風に後ろ髪を引かれながら、12日の朝にベリーズを発った。ベリーズからメキシコ側の国境の街であるチェトゥマルまでは、ベリーズシティの船着場とバスターミナルの二箇所からバスが出ている。ホテルからの道を考えると船着場の方が近いのだが、そのバスは私のグアテマラの滞在をあれ程まで短く強烈なものにしてくれた某旅行会社のものだったので、考えるまでもなくパスし笑、ターミナルから出ているバスに乗り込んだ。ベリーズという国はまさに森林を切り崩して創った国であり、点在する都市間には青空と緑と道「しか」ない。そんな風景を眺めていると、あっという間に国境に到着した。


ベリーズ側のイミグレーションは何事もなく通過したのだが、問題はメキシコへの入国手続きである。グアテマラ入国編でも書いた通り、出国時のイミグレーションの係員の明らかなミスがあったからである*1。どうなることやらと思いつつ、出国手続きを終えた私達を乗せてバスはメキシコ側のイミグレーションへ向けて動き出した。



ベリーズからのバスはチェトゥマルのバスターミナルまで行くことになっていたので、多くの乗客は荷物をそのままバスに置いて入国の手続きに向かったのだが、私はモメるのが「確定」していたため、万が一のことを考え荷物を全て持ってバスを降りた。案の定「奥へどうぞ」との指示をいただき笑、一般の方々とは違うオフィスへと通された。まずは出国の際に起きたことを逐一説明すると、あからさまに面倒そうな顔をされ笑、後ろに並んでいた簡単に問題が片付きそうな方々を先に通すこととなった。中にはスペイン語を話せない方もいて、そういう方の順番になると「そいつに〜って英語で訳しといて」と下働きまで命じられつつ笑、誰もいなくなるまで待たされた。いよいよ私の番になり、再度状況を説明すると、メキシコシティで説明されたのとも出国の際に言われたのとも違うことを言われ、誰を信じていいのか分からなくなる。状況はまさに群雄割拠の戦国時代といった様相を呈していて笑、呆然としたが、そこは伊達の地の出(関係ないが笑)、多少見苦しくも何とか切り抜けることができた。それにしても、出国の際の係員の不手際を指摘すると、私は「あぁ、そうだったんだ、それは悪かった」とでも言われるだろうと踏んでいたのだが、実際には「あぁそりゃ間違いだわ」の一言だけだった。同僚の致命的ミスにも関わらずこの対応は、流石メキシコ、である笑。


その後イミグレーションの外で待ってるはずのバスへ向かうも、その姿はどこにもない。やはり手続きの前に脳裏を過ぎった「万が一」が起きてしまった様だ。近くにいた方々に聞くと、もう20分も前に出てしまったとのこと。掛け違えたボタンは後々までも障害をきたす、ということである。


仕方がないので値下げ交渉をしてタクシーを拾い、ベリーズで払ったのと同じくらいの額を払い泣、この日の目的地であるトゥルムへ行くためにターミナルへと向かった。とは言え私の酷過ぎるスパングリッシュスペイン語が混ざった英語)から開放され久々のスペイン語生活に戻ったためか、車内での運転手の方との会話はかなり弾んだ(メキシコに「帰ってきた」という思いは、しかしどこかねじれている気がしないでもないが、この時は強くそう感じた)。終わりつつある旅の一つの区切りに達し、郷愁と侘しさが混ざった不思議な感情が胸に去来したのだった。

*1:正直に言うと、この件がずっと気にかかっていたということも、旅の予定を変更した原因の一つである。