カレーとカリブ海と中華とアイスティー(笑)のベリーズ


ベリーズに入国し、まず初めに目指したのはサン・イグナシオという中西部の街である。ハッキリ言って特に見所もないこの街に滞在したのは、この街にバックパッカーに人気の美味しいスリランカカレーの店があるからだ笑。フローレスで美味いものにありつけなかった分、ここで、という魂胆である。昼過ぎに着き、早速そこに向かう。味は、その日の夜も飽きずにまた通ったと言えば十分だろう。この旅で一番のご馳走だった。


この街はグアテマラ国境に近いことと歴史的な要因もあり、殆どの人がバイリンガルである。例のカレーの店のウェイターの方もそうだったことを考えると、若い世代でも状況は同じであると言えよう。そして興味深かったのが、そのウェイターの方の言語感覚である。初めは英語で"Here your water, man"と言っていた彼だが、私がスペイン語の方が今は話せると言って、メニューについてスペイン語で話した後にカレーを運んできた際には"Your curry, my friend"となっていた。これは呼びかけの考え方の違いからきている。man(menに聞こえるが、それは私の英語リスニング力がないせいだと思う笑)は英語(黒人の方々の英語からきているはず)での呼びかけであるが、スペイン語ではamigo(アミーゴ、友達の意)となる。故に、件のウェイターはスペイン語的思考で英語でmy friendと言ったと考えられる(英語では普通呼びかける際にmy friendとは言わない)。多言語話者の思考法が垣間見えた瞬間だった。


この街はホントに小さく、一周するのにそれ程時間がかからない程である。しかし、何故かこういう街に惹かれてしまう。カレー屋の近くのカフェ&バーの様な店の女将さんももの凄く良い人だった。ホテルの方々もまた然りである。またベリーズに行く機会があったら確実にまたこの街に立ち寄るだろう。何をするでもなく、ただボーっとするために笑。


明くる10日、ベリーズシティに到着した。到着早々トイレでお金を払い忘れて(というか徴収係がいなかったので分からなかった)おばちゃんに怒鳴られるというアクシデントがあったが、その後は何事もなくホテルも決めて落ち着いた。照りつける太陽の中、海岸線を散歩している時がこの旅で最高の至福だった。グアテマラで飲んだビールは口に合わなかったが、ベリーズのベリキンというビールは最高だった。想像していただきたい。燦々と照る太陽の下、カリブ海を眺めながら潮風に吹かれ、ビールを飲む、その瞬間を。もう何もいらない、とすら思えた。



ベリーズシティでは中華三昧だった。ホテルの前が中華料理屋ということもあり、毎晩通わせていただいた。メニューはメキシコでみるものと変わりないのだが、味はベリーズに軍配をあげたい。そしてベリーズにあってメキシコにないもの、それがアイスティーである。メキシコのレストランではこれがないために炭酸飲料水を頼まなければならず、糖尿病へ向けて一直線の道をひた走らねばならない笑。約半年ぶりのアイスティーには感動すら覚えた。


翌11日はキー・カーカーという、ベリーズシティからボートで30分程行ったところにある島へと足を伸ばした。カリブ海に浮かぶこの島でのミッションは泳ぐことであったが、生憎この日は朝から曇っていた。僅かな望みを胸に島へと向かったのだが、天候は回復するどころか小雨すら降り出す始末。仕方がないので本降りになる前にベリーズシティに戻ることにした(この日の前日と翌日は雲一つない晴天だったのに…)。



ところで、ベリーズはコロンビア・アメリカ間の麻薬輸送の中継地として名を馳せている。またカリブの文化が交錯する地でもあり、そのためかマリファナが広く流通している様だ。ベリーズ・シティとキー・カーカーで一度ずつ、また声をかけられた。と言うか、旅の後半戦はこの手の売人に声をかけられて断る、ということを繰り返していた。何だかなぁ、というカンジである(この点についてはカンクン編辺りでもう一度取り上げるつもりでいる)。しかしベリーズのバイヤー達は、一度キッパリと断ると、そういう考えの人もいるし、その分ビーチで楽しみな、とすぐに言ってくれたのがせめてもの救いだった(フローレスの時はこちらがキレるまでしつこかったので)。


何はともあれ、ベリーズではホントにバカンス気分を味わうことができた。幾つかの街が点在するだけの小さな国だし、ドラッグや酷い差別等の問題もある。物価も高い。だが、青い空とカリブ海(とベリキン笑)はそれらをカバーするに足りる魅力を持っていた。スペイン語と英語の混交具合も興味深い。このカリブ海沿岸の小国を、私は結構好きになったのだった。