グリンゴテナンゴことフローレス


とは言え折角楽しみにしていたグアテマラ、気を取り直さなければとホテルを数件回り、良さそうなところに決める。換金や次の日のティカル遺跡へのチケットを手配し、一息ついたところでホテルに戻り例の如くビールに舌鼓を打つ。が、この時飲んだXXX(triple ekis)というグアテマラのビール*1が何故か口に合わなかった泣。我慢して飲んでいたところ、ホテルの向かいの旅行代理店(おそらく前述の会社と提携しているカンジだった)の方が英語で話しかけてきた。疲れていたので英語で聞かれたことをスペイン語で返していたのだが、話は込み入った方へと進んでいった。曰く、以前そのホテルに泊まった日本人がマリファナを彼から買って非常に楽しんだということで、私にも薦めてきたのだが、薬物の類に全く興味のない私はハッキリとやらない、やる気すらないと言った。が、ここから彼は英語というよりはただの擬音語で以前ハイになったという日本人男性の楽しそうな姿、自分の持ってるマリファナの素晴らしさ(?)を説明し、10ドル、10ドルとしつこく言う。終いに私は無視を決め込んでビールを黙って飲んでいたのだが、その横でしつこく10ドルと連呼し続ける彼。最悪な一日はまだ終わっていなかった。


不味いビールを半分残し、しつこく粘る彼を無視し、私は長距離バス会社の窓口に向かった。この街にもうこれ以上いたくはなかったので、翌日ティカル遺跡を見た後に夜行でグアテマラシティへと行ってしまおうと思い立ったためだ。メキシコ以上に治安が悪いグアテマラで夜間の移動は正直危険だが、一等バスならノンストップだし大丈夫だろうと判断し、チケットを購入した。リミットを設けたからか、自然と気持ちは落ち着いた。


夜はホテル近くの安い食堂に行った。メキシコで培った、「見た目は汚いが味は美味い」という法則に則ったチョイスだったが笑、結果はハズレ。フローレスの飯の不味さは話に聞いていたが、あまり信じてなかっただけに、あぁホントなのか、と思わされた笑。その後、何もかもツイてなかった一日だったなぁとホテルの前で夜風に当たっていると、同じホテルに泊まっていたイタリア人カップルが話しかけてきた。何気ない雑談が膨らみ、気付けば一時間以上三人で談笑していた。メキシコから南下してきたこと、イタリア語と似ているから旅をしながら二人でスペイン語を学んでいること、そして中南米ではネタが尽きた時に決まって始まるgringo(グリンゴ、女性系はgringa(グリンガ)で、アメリカ及びアメリカ人という意味)批判まで、大いに盛り上がった。彼等とこの時出会えたおかげで何とか精神の安定を保てたと言ってもいい。その後部屋に戻ってから、出ると言われたホットシャワーが出なくても発狂せずに済んだのも彼等のおかげである(結局シャワーは浴びずにこの日は寝た)。


後で聞いたのだが、フローレスは「グリンゴテナンゴ」と言われているらしい。テナンゴとはグアテマラの先住民の言葉で「場所」を表す(グアテマラには「〜テナンゴ」という地名が多い)。つまりグリンゴテナンゴとはアメリカ人の街、という意味だ。アメリカ人旅行者で溢れ、そのために街全体がビジネスライクなフローレスを揶揄した言葉である。確かに商業主義というか、そういう雰囲気は全体的に漂っている(しかも露骨に)。まぁそういう需要が確としてあるからなのだろうが。

*1:グアテマラのビールで最も有名なのはgallo(ガジョ)という銘柄だが、この時の失敗が尾を引いて試す気になれなかった笑。