サンクリストバル・デ・ラス・カサスにて
サンクリに着いたのも朝だった。ホテルは中心街のホステルが見つからず(その辺りは「地球の迷い方」(「地球の歩き方」の別称(蔑称?))の為せる業だろう笑)、外れにある某日本人宿に一度決めるも、次の日のバスの時間(朝の七時!)の関係で、後にターミナル近くのポサーダ(簡易ホテルの様なもの)に腰を落ち着けた。このポサーダのオーナーらしき人物は、私がスペイン語を解さないと思ったのか、窓が閉まらないとかタオルがないといった苦情を漏らしたら、私の眼前で(!)「ったくなんだこの野郎…etc」と言い始める、いささか失礼なオヤジだった。そしてこんなことがあったせいか、サンクリではそれほど楽しめなかったのも事実である。通常、旅をしていると宿は新しい街に行ってまず初めに確保するものであり、その印象如何によってその日一日の気分、ひいてはその街の印象も決まってしまうものなのかもしれない、ということにこの時気付いた。
サンクリはサパティスタ国民解放軍という、反グローバリズムの反政府組織が活動の拠点としているチアパス州にある。サパティスタ礼賛者は日本にも意外に多く*1、そのせいかチアパスやサンクリの評判も良い。ただ、聞くと見るではやはり違いがある。オアハカの後だったからかもしれないが、それ程良いと思えなかったというのが本音である。
一つ驚いたのが、ソカロ周辺を歩いていた際、先住民系の衣装に身を包んだ子供達に後ろから"Chi, chi!"としつこく叫ばれたことだ。chiとはchino(女性系はchina)の省略で、元は中国人という意味だがスペイン語圏では広くアジア人を指す言葉としても用いられている。半ば差別語だが、それ程悪気があって使ってるわけでもないらしい(確かに彼等にしてみれば見分けがつかないだろうし、日本や韓国というのは中国の一つの州の様なものという考えが一般的な様である)。しかし面と向かって叫ばれる場合は差別語以外の何物でもない。アイデンティティポリティクスだとか先住民性だとか、そういったものには触れないが、先住民系の子供達に"chi!"と罵られるというのも何だか不思議な経験であった。それ程腹が立たなかったか、と言えば、違うのだが(無視していたら何回も繰り返し叫ばれたので、やはり良い気はしない)。