ガエルとディエゴ


先週の木曜日、数人の方と共にメトロ(地下鉄)Divisio'n del norte駅近くにある日本食レストラン「Deigo」に行ってきた。読みかけの本があったこともあり一度は誘いをお断りしたのだが、思い直して(と言うよりも日本食の誘惑に負けて笑)参加させてもらうことにした。


中心街から程遠く、ガイドブック等には載っていない店なのだが、在メキシコ邦人の評判は一様に高い。値段は良心的とはいえないが、味を考えると頷ける。久し振りのカツ丼は私をしばし無言にさせた笑。


食事の後、隣の駅のZapataまで移動し、一緒にいた二方とPlaza Universidad(プラサ・ウーニベルシダッ、モールの様なところ)で映画を見ることになった。この日見たものは日本映画のリメイク作品である"Bailamos?"(原題"Shall we dance?")。キャラ設定等、オリジナルに忠実であり、笑いどころも本家同様満載だった。


実は映画の途中から頭痛がしていて上映が終わったらすぐに家に帰ろうと思っていたのだが、外に出てみると辺りが何らや騒がしいことに気付く。赤絨毯が敷かれ、警備員らしき方が多数、せわしなく動いている。一緒にいた方が近くのメキシコ人の子に何かあるのかと尋ねたところ、新作映画("Criminal")のプロモーション(試写会)でディエゴ・ルナが来る、とのことである。是非一目見たいとその方が仰ったため、テレビカメラが大挙する入り口付近ので彼が来るのを待つことにする。事前に知らされていたのかどうかは分からないが、ハリウッド映画にも出演しているスターが来るにしてはあまり人が多くなく、柵のすぐ近くに位置取ることができた。


タレントや俳優の名前を覚えるのが苦手な私は、実のところ、ディエゴ・ルナという名前を聞いてもそれが誰なのか分かっていなかった。彼が出ている「ターミナル」を先日見たばかりだと言うのに(後で顔を見て、あぁあの「ターミナル」の、と思わず言ってしまった)。思えば彼は「天国の口、終わりの楽園。」にも出ていた俳優である。


スターというものの特権なのか、予定された時刻を過ぎても彼は一向に現れない。その間、映画の関係者等がやって来ては写真を取られたりインタビューされたりしていたが、頭痛に耐えながら一時間近く立ちっぱなしの私としてはもう半ば帰りたくなっていた笑。しかし、そんなことを考えているうちに、思いもしなかったことが起きた。


どこかで見たことのある、背が低く甘い顔をしたメキシコ人が入り口から入ってきた。テレビカメラが一斉に彼の姿を捉え始める。何となくそれが誰かは分かったが、遠目だったこともあり念のため近くにいたメキシコ人の子にあれは誰かと尋ねた。彼女が言った名前はやはり私の予想と同じだった。ガエル・ガルシア・ベルナルである。


「モーターサイクル・ダイヤリーズ」についても以前触れたが、まさかその主役が今、目の前に来るとは、全く思いもよらなかった。インタビューを終えた彼は、ファンが悲鳴にも似た声で名前を叫ぶ、私達の方へと歩を進めた。既に手帳とペンをスタンバイしていた(笑)私は、周りの方々同様手を彼の方へと伸ばした。そして次の瞬間、手の中にあった手帳の感覚がふと消えた。ガエルが取ってくれたのである。


手帳の一ページには"chido Gael G B*1"と記してあった。私は決してミーハーな方ではないし、ガエルについても、それなりに好きだし良い俳優だとは思うがファナティックなファンではないが、間近で見るスターはやはりオーラというか、そういうものを纏っており、それに駆り立てられて(思い返してみれば)かなり恥ずかしい行動を取ってしまった笑。が、一生モノの思い出になった。ガエルは気さくなナイスガイであった。


彼のすぐ後にディエゴもやって来た。この際ディエゴにもサインをもらおう、と思ったのだが、すぐ前にいた50歳前後と思われる男性の見事なブロックに遮られ、それは叶わなかった。が、贅沢は言えない。


狂乱の映画館を後にすると、頭痛が酷くなっていた。はしゃぎ過ぎたのであろうか笑。その後は速やかに家に戻り、半分は優しさでできていることで有名なバ○ァリンを飲んで直ぐに休んだ。

*1:"chido"は英語の"cool"にあたり、"G B"はガルシア・ベルナルの略