ダメな弟


五歳年上の兄が、本日、新たな人生の一歩を踏み出した。


私にとって兄はたった一人の兄弟である。田舎育ち故に近隣に親戚が多く、子供の頃は二人の従姉妹と合わせて四人兄弟の様に育てられた。その思いは今でも強いし、これから四人四様の家族を築いていけばいく程に、逆説的にその特有さは増していくのだと勝手に考えているが、しかし、血というものに基準を絞れば、私には兄弟は一人しかいない。その、たった一人の兄の結婚式に出られないというのは、何とも物悲しい。


悪態をつく様だが、今回の件は大人の事情(≒子供の事情)により急遽決まったことであり、私のメキシコ行きの方が半年以上も前に決まっていた。その点では責任は半々、と言えよう。


しかし、上述の様に、親戚が近くで支えあって暮らしている、そんな環境で育ったためか、家族に対する思いは強いので、申し訳ない気持ちは拭い切れない。多分これからもこの思いを引きずっていくことになるのだろう。


兄とは約二十一年間付き合ってきて、色々な思い出がある。良いものもあれば、そうでないものもある。言いたいことは山ほどあって、上手く纏めきれなかったが、一応手紙というカタチにしたものを送り、式で代理の方に読んでいただいた。しかし、この様に私はあまりものを書くのが上手くないので、思いが伝わったのかどうか、心配である。


本当にダメな弟だ、とつくづく思う。自分のことばかりに目がいき、大切な人の役になどこれっぽっちも立たない。我ながら情けない限りだ。


しかし、ダメなりにも、真剣に考え、密かに思っていることがある。多くは望まない、大切な人には、それだけでいいので分かっていて欲しいし、信じていて欲しい。現時点でのそれは、兄が送ろうとしている新たな人生が素晴らしいものになること、新たな生命が平穏無事に誕生してくれること、である。