高山先生


今年でこの留学プログラムは第三十二回目を迎えるそうだ。昨日は三十二期生である私達を激励しに、第一期生の方がお見えになっていた。


大変失礼なことだが、初めは物腰の柔らかなお方だなとしか思わなかった。しかし改めてその方のお名前を伺って驚いた。その方はなんと、オスカー・ルイス『貧困の文化―メキシコの<五つの家族>―』(ちくま学芸文庫)の邦訳を手がけられた高山智博先生でいらしたのだった。


まさか高山先生の様な方とお会いできるとは思ってもみなかった。畏れ多かったが、しかしせっかくなのでわずかではあったがお話をさせていただいた。オスカー・ルイスを後継するような研究者が育っていないことを先生は嘆いていらしたが、同時にこれからの若者がそうなることを期待してもいらっしゃった。


メキシコでの一年はあっという間だが、十二分に楽しんできてくれ、という激励の言葉を頂いた。先生は私の様な者のことなどお忘れになるだろうが、私にとってこの先生から頂いた言葉はとても貴重なものであり、これから何度でも思い出すだろう。先生の激励を無駄にするようなことになってはならない。そう強く思った一日だった。