浅羽通明『右翼と左翼』


最近のラテンアメリカ情勢を語るニュースではよく「左傾化」「左翼政党」「左派政権」といった言葉を耳にします。確かにラテンアメリカには、キューバカストロベネズエラチャベスのみならず、ブラジルのルーア、チリのバチェレ、ウルグアイバスケスボリビアのモラレス等、左がかった政権が続々と誕生していますね。メキシコでも、左派のPRDが先の大統領選で破れはしたものの、大統領候補だったロペス・オブラドールの人気は絶大で、そのため選挙に勝ったPANが不正を行ったんだ、なんてことも結構言われてたみたいです。


ただ、政治を語ってる人が何気なく使ってる「左翼」とか「右翼」っていう言葉は実はちょっと分かりにくかったりします。これは自分が不勉強だということもあるとは思うんですが、平和や自由や平等を求めてるはずの側が人民を虐殺したりどっかの山奥で仲間を殺したり、ということが繰り返されてきたからか、どうもそういうイメージを抱いてしまうんです。


そんなことを常々思ってたので、浅羽さんのこの本は発売当初から気になってて、と言うか結構前に買ってたんですが、年末のゴタゴタで本棚に埋もれてました。で、結局復旧しなかったデーターベースの回復を待つ間にちょぼちょぼと読んでみました。


「右翼」と「左翼」に関する概説書らしく、有名なフランス革命の頃の議会の話から、右翼と左翼(という意味合い)の世界史的変遷、日本における右翼と左翼という用語、という風に丁寧に話が展開していき、とても読みやすかったです。それと近年言われるようになった日本の(特に若年層の)「右傾化」という言説に対し、別に右に偏ってるわけではなくて「思想」が「現実」に押されてるんだ、と反論してるのにも同感でした。


浅羽さんも言っている様に、右翼と左翼を定義づける軸が、一昔前と今とでは異なるものになってきていて、しかも複雑になってきているのは確かだと思います。ここでも語られてる通り、ラテンアメリカの左派政権と一口で言っても色々なタイプがあるんですよね。ちなみに先日お会いした、現役の外務官僚の知人によると、外務省の南米課では「ラテンアメリカの左派政権」といった表現は使われていないんだそうです。その理由もやはり、左派という括りがますます曖昧で捉え所のないものになってきているから、なんだとか。最近ではその代わりに「ポピュリズム政権」という言い方をしているそうです。


何だか感想にすらなってませんが(ワイン飲みながら書いてるので眠くなってきてますw)、メモ代わりということで。


右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)