Gustavo vega教授


だいぶ前のことになるが、先週学生証の手続きで大学に行った際に、こちらの大学でお世話になるGustavo vega教授とお会いした。日本で言う指導教官の様な方である。


私の様な一介の学部生にも指導教官を宛がってくれることにも驚いたが、しかもそれがNAFTA研究で有名なGustavo教授だとは思いもしなかった(私の様な不真面目な学生でも名前ぐらいは聞いたことがある)。しかも突然の面会で、かなり動揺してしまった。


Gustavo教授にお会いし何か研究等についてお話させていただくことが事前に分かっていたら、まだ何かしら(語学的な意味で)準備することもできただろうが、急な話だったので、ここで何をしたいんだとスペイン語で問われた際にまごついてしまった。見かねた教授が英語が話せるのなら英語で話そうか、と仰ってくれた。スペイン語よりは幾分英語の方が得意なので、御好意に甘えさせていただき英語でコミュニケーションを取ったのだが、メキシコに来てからこの時ほど自分のスペイン語力のなさを恥じたことはない。


大学側がGustavo教授を私の担当に宛ててくれたのは、留学プログラムに申し込む際に書いた志望書を読んでくれていたからだと推測できる。志望書にはNAFTAやFTAAがメキシコに与える影響、といったマクロ経済的な開発問題について学びたいと書いた。しかし留学が決まってから、私はまた違った分野にも興味が湧いてきた。それはインフォーマルセクター(露店商等、公式統計に反映されない経済活動部門)という分野である。そしてその興味は、メキシコに来てから多くの露店、メトロやペセロの中での物売りに従事する方々の姿を目にして更に大きなものとなった。


Gustavo教授と話した際、この二つのトピックについて、各々また両者の関係に興味があると今の心境を正直に話し、専門分野の研究と共にさしあたっては(語学力向上のためにも)講義の聴講もしたいという希望を伝えた。勿論Gustavo教授にしてみれば、御自身の専門であるNAFTA研究という答えを期待していただろうし、事の成り行きからしてそれは当然のことでもあった。それ故多少驚かれていた様にも見受けられた。しかし、それならば多少領域が異なってくるのでそれ程役には立てないかもしれないし、現在Gustavo教授は講義を担当されてないため講義を取りたいなら他の先生の講義を取らなければならない、だが何か学問的な質問等があればいつでもオフィスにお邪魔しても構わない、と仰ってくれた。


研究の方向性もブラついてしまう様な私に暖かい言葉をかけてくださったGustavo教授には頭が下がる限りである。これから一年間、教授には色々とお世話になるはずである。教授の下で色々と学べる(だろう)ことを、心から嬉しく思っている。


この一年間を通して、具体的にはNAFTA及びFTAAといったマクロな問題とインフォーマルセクターというミクロな問題の相互影響を学んでいくつもりでいるが、その根底にあるものは人間や人間の幸せ、尊厳といったものを中心に据えた「開発」を考えたい、という思いである。より広い意味での「開発学」と言えるだろう(が、大きな顔をして語れるレベルにまだ達していないことは言うまでもない)。


これは未熟者に共通のナイーブな理想論なのかもしれない。より現実に即したものの見方を身に付けなければならないのかもしれない。Gustavo教授やメキシコという国との関わりによって、私のこの思いはどの様に変わるのか、また変わらないのか。一年後に私はその答えを得ているのだろうか。